「書くことは自分の人生を見直すことにつながる」と話す国母さん

「書くことは生きがい」上籠谷町の国母仁さん

第44回宇都宮市民芸術祭文芸部門 
随筆部門で初の最高賞

文化

 宇都宮市上籠谷町の国母仁さん(73)が、第44回宇都宮市民芸術祭文芸部門の随筆・エッセー部門で市民芸術祭賞を受賞した。2005年以来毎年のように投稿。これまで奨励賞、佳作が続き、念願の最高賞に「自分の生き様を残しておきたいと日記、随筆を書き始めた。書くことは生きがい」と喜んでいる。

 文芸部門は小説、詩、短歌、俳句、川柳の6部門に市民61人から78作品が寄せられ、36点が入賞した。随筆は400字詰め原稿用紙5枚以内で18人が応募。審査員は宇都宮ずいひつの会代表小島延介さんら3人。
 受賞作「からまる」は、妻と娘と仲良くしている姿を横目に2人の会話を聞くだけの著者。そこから自身の父親に思いをはせ、父もまた、子どもとの関係を器用に築けない人だった。審査員のグループしらさぎ代表松林厚子さんは「一筋縄ではいかない親子関係を的確に表している。文章から著者の切ない思いが伝わり、自分を飾ることなく、素直に綴っている。比喩の使い方も絶妙で読後感も良い」と選評を寄せた。
 旧二宮町(現真岡市)生まれ、8人きょうだいの7番目。小学生の頃、読み書きが少し苦手な母親に新聞記事を読んでいた経験から文章に興味を持った。真岡高卒業後、銀座の洋食店で4年間の厳しい修業中、日々の喜怒哀楽を日記につけ始めたのが創作の原点という。
 22歳で帰郷し真岡市内に食堂を開店。29歳から国道408号沿いにとんかつ「つくし野」を開業。一昨年、コロナ禍や年齢、健康上の理由で閉店したが、半世紀以上、日記は欠かさず大学ノートは50冊近くになった。
 45歳で短歌会に入会。53歳からカルチャーセンターの文章教室に通った。2年後、同芸術祭に初応募した母親を題材にした随筆「逆さ睫毛」で佳作に入り、創作意欲が増したという。
 現在、県文芸家協会など文芸団体、結社に複数所属。昨年、脊柱管狭窄症の手術を受けて活動は控えているが、「日記は毎日書くこと」と創作意欲は衰えていない。
 表彰式は他部門の入賞者と共に7月22日(土)、市役所で行われる。

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