最優秀賞「Grmoire(グリモア)」。魔術書を意味する。作品はMEAMに所蔵された。

スペイン語で受賞の喜びを語る潮田さん(中央)

リアルな女性像で最高賞

スペイン・MEAM主催、写実絵画の国際展
正確な筆致、色彩高評価

文化

 人物の写実絵画を手掛ける真岡市出身の画家潮田和也さん(40)が、スペイン・バルセロナの欧州近代美術館(MEAM)が主催する第12回国際具象絵画彫刻コンペティション「Figurativas(フィギュラティバス)2023」絵画部門で「グリモア」(F20号)がアジア人初の最優秀賞を受けた。絵画、彫刻部門を合わせた総合1位にも輝いた。先月6日、現地であった授賞式で潮田さんは「スペインの芸術の奥深さ、懐の深さ、偉大さに感謝します」などとスペイン語でスピーチした。

~真岡市の画家潮田さん~

 同コンペは、世界中の気鋭作家が参加する世界で3本の指に入るリアリズム絵画コンクール。受賞作は文星芸術大大学院の後輩をモデルに、大学にあったタペストリーなど、それまで描かなかった背景にもこだわった。背景だけで1年を掛けた。
 審査員に現代スペインリアリズムの巨匠、アントニオ・ロペス・ガルシアが名を連ねたのも話題。「高度なスキルを習得した筆致で人間の本質を正確に捉える能力、細部、光、影、並外れた色の習得は審査員に痕跡を残した」と審査評。授賞式で審査員の一人が「審査のとき、ガルシアが『この絵は、絵の描き方を知っている人の絵だ』と言っていた」と教えてくれた。
 「ゴッホに憧れ、漠然と画家になりたいと思った」中学時代。進学した益子高(現・益子芳星高)3年から絵画教室に通い、美術大学を目指した。が、一浪して入った文星芸大で進路に迷い、大学院修士課程修了後の3年間、悶々とした日々を過ごした。
 転機は恩師に誘われ博士課程に進んだこと。油画科の石山かずひこ専任教授(当時)と、厚塗りでき、細密表現も可能にする汎用性に富む、写実絵画に適合する「練り込みOGテンペラ」技法を開発。博士号を取得した。
人物画を中心に油彩と練り込みOGテンペラを駆使。「人間の持つ生命力、命の輝き」を描き、飛躍的に表現力が増したという。
 欧米が主流だった写実絵画が近年、日本でブームになっている。潮田さんは、火付け役となったホキ美術館(千葉市)が2013年に主催した第1回大賞展、16年の2回展で入選。20年の3回展では特別賞を受けた。
 「フェアな評価をしてくれる海外で勝負したい」と同年、米国・ニューヨークに本拠を構える世界最大級の国際写実絵画コンクール「ARCサロン」に初出品し、ファイナリストに選出された。翌年、主催団体ARC(Art Renewal Center)の準会員に承認された。同年、「miracle」がMEAMに収蔵された。
 県内外の画廊で個展を開いてきたが、最近は主にネット・オークションに出品する。今回の受賞に「諦めず描き続けた結果。日本にいては感じることができない『世界』の端っこに指を掛けられた感覚」と話し、「これからが本当の戦い。次の目標はARC会員になること」と意欲を燃やす。

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