篠藪を刈った後の山肌は落葉で黄金色

運び出した落ち葉の袋の前で

キラリ人生 木の葉さらいは「3方良し」

~山と人を思いやり循環型社会実践~
茂木町馬門  宮下秋迺(あきの)さん(94)

日々是好日

 夏のある日、ツインリンクもてぎ近くの馬門稲荷神社脇で、仲よし2人と輪投げを楽しんでいた秋迺さん。「木の葉をさらい、山がきれいになると気持ちがよい。早く秋にならないかな」と山を見上げた。
 茂木町では、家庭などからの生ごみ、牛糞、落葉、おがこ、もみがらの5種類の地域資源を「茂木町有機物リサイクルセンター美土里館」で混ぜ合わせ、良質な堆肥を製造、人気を博している。同センターは平成15年4月から稼働し、1シーズン25袋以上納入できる町民から落葉を買い取っている。落葉を集めることで山がきれいになり町民の健康増進、収入にもつながっている。
 秋迺さんは、そんな落葉を15年余り美土里館に納めている。例年、12~2月初旬に木の葉さらいを行っているが、今年は11月に山にいくと落葉があり、下旬にはすでに50袋を集めた。「天気が続いたからか11月にさらったのは初めて」という。
 熊手で落ち葉を集めるには、まずは篠や小木を伐採するのが大切。今年はうっそうとした篠藪をきれいに刈った。鎌で斜めに刈ると、切り口が鋭利で踏むと靴底を通して怪我をしてしまうため、秋迺さんは、両手で枝切りばさみを使い切り口が平面になるように刈り、木の根元などに寄せておく。「落葉に小枝が入ると、美土里館の人たちの手を煩わせてしまう。職員が効率よく仕事ができるように落葉だけを袋に入れている」と、次に仕事をする人を意識して動く。
 朝9時過ぎに山に入る。山から自宅が見えるが、時間がもったいないと弁当やおやつ、飲み物持参、乾いた落葉を約15㎏入る袋に目いっぱい詰め込み、回収に来てくれる場所まで、背負いはしごや一輪車で運ぶ。汗ばんで服を脱ぐほどで免疫力が上る。琥珀色の落葉の中に咲く紫のリンドウを見ながら「山を手入れすると当薬やチタケも出る」という。
 山を愛する秋迺さんの循環型社会の実践は、「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の「三方よし」で、秋迺さんの仕事ぶりを卒業論文にしたいと、宇都宮大学農学部森林科学科の学生が准教授と調査に訪れたこともある。
 オフシーズンは、お裁縫や仲良し友達と神社で輪投げを楽しむ。「山をきれいにすると収入になり、孫やひ孫にお小遣いもあげられる。優しい家族、地域のおかげで悩みはないの。肉が好きで、整骨院の先生に『すばらしい筋肉』と褒められた」と笑う。

今号の記事