詩集「孤帆」を持つ大畑さん

詩集「弧帆(こはん)」を出版

市貝町 大畑耕兵さん

社会

 市貝町田野辺の大畑耕兵さん(77)は、2月に詩集「弧帆」を自費出版した。
 夫人が他界して25年になるが、存命なら揃って金婚式を迎えたことからこれを記念して出版した。夫人の闘病生活と家族の絆を綴った詩集「帰るからね」を平成27年に出版、今回の詩集にはその後書き溜めた30編を綴った。
 23回忌で妻が記した闘病日記を処分し、辛い思い出に別れを告げた。その後、箪笥の奥から思いがけず数冊の家計簿が見つかった。そこには一日一日の出来事や娘たちの成長が細かに記され、妻の想いを解くカギとなった。
 詩集「孤帆」は、現実を前向きにとらえ、男らしく生きていく覚悟を表したという。全篇に、夫人への溢れる愛情と思慕が貫かれている。市貝町立図書館に収蔵。収録されている一編を紹介
 田村草の花
今日はあなたの誕生日
ふり返れば
ともに白髪の生えるまでを祈願して
敬老の日に挙式を挙げた五〇年前
長生きして孫と連れ添い
二荒山神社の石段を上がりたいと
夢を話したあなただった
長女次女が誕生し
「こんどもたいせつなもの忘れてきたみたいです」
とお産婆さんが言って
三女が誕生
自分の余命を察知してか
早めに用意していた留袖は
一度も袖を通さないままあなたは逝った
「娘たちにね」と託した
あなたの声がふと聞こえてくる
秋の田村草の花がそよぐなかから

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