修復される長屋門の前で筑波大学大学院生と濱田さんら

益子町 民芸運動の聖地で茅葺屋根の長屋門全面修復

クラウドファンディングで目標額を大きく上回り
濱田窯×筑波大学大学院有志のプロジェクト

文化

 益子町道祖土の濱田窯(濱田友緒代表)のシンボリックな建造物の長屋門の茅葺屋根の修復工事が始まる。「益子濱田窯×筑波大学大学院有志チーム」が募った「濱田庄司とバーナード・リーチの茅葺き屋根長屋門再生と創造」クラウドファンディング(以下CF)で各地の442人から目標の800万円を大幅に上回る支援総額1139万7000円が寄せられ、念願の全面修復が叶った。土台工事は7月、屋根の修復は9月以降の予定。
 陶芸家で人間国宝の濱田庄司(1894―1978年)が残した茅葺屋根の長屋門は、道路沿いに佇み濱田窯や益子参考館がある約3万坪の敷地のシンボルとして来訪者を迎えている。同長屋門は88年前の1934年、イギリス人陶芸家のバーナード・リーチが益子に長期滞在中の仕事場・居室スペースとして庄司が近隣から移築させた建物。旧濱田邸の一部は益子参考館として一般公開され、同長屋門は濱田窯私有として残された。
 長屋門の室内は数年前から整理され、未来に生かす文化施設として「リーチルーム」と名付けられ新たな活用が始まった。一方で茅葺屋根や土台の劣化が激しく屋根にシートを被せて急場をしのぐ状態で、修復が喫緊の課題となっていた。しかし茅葺屋根の修復には多額を要する。
 友緒さんの長女(筑波大学大学院)の学友を介して、歴史的建造物に興味がありCFの研究をしている同院のシステム情報工学研究群社会工学学位プログラムの青木悠さん(23)が友緒さんの思いに共感し、仲間6人とCFのプロジェクトを結成、同大学の茅葺民家研究家・安藤邦廣名誉教授など多方面からの応援を受け濱田窯と共にCFに臨んだ。
 現在、支援金で茅の調達などを行い、時には茨城県から無償で茅の提供もあるなど支援は後を絶たない。
 青木さんは「支援金が集まったから終わりではない。25年後の屋根葺き替えに向けて、院内の後輩に伝え繋げていきたい」と未来を見据える。友緒さんは「大学院生に背中を押されたプロジェクト。多くの方に感謝の気持ちを表すのは言葉では足りません。茅葺屋根の長屋門での文化活動を続けていくことで感謝の思いを示していきたい」と支援への感謝の思いを語った。

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