児童からの年賀状を手にする左から女将の美江さん、若女将の絵莉さん、村田支配人

お礼に贈った益子焼

コロナ禍に生まれた絆 児童からの年賀状に決意新た

~禍福は糾える縄の如し~
益子舘里山リゾートホテル若女将 高橋絵莉さん(24)

日々是好日

 元旦に届いた年賀状。いつもの年より分厚い枚数が届いた。若女将の絵莉さんは、ホテルの専務を務める弟の慶匡さん(22)と共に賀状を振り分けながら、ふと子どもの筆跡に目が留まった。読むと、『修学旅行が中止になり行けなくなったけど、準備をしていただきありがとうございました』とあった。めくっていくと次々に子どもたちからの年賀状があり、「宿泊できなくて残念だけど、ホテルのスタッフの皆さんがんばってください」「いつか家族で行きたいです」などと書かれ、宛名は、益子舘代表者様、従業員一同様に統一されていた。
 全員の住所から、この賀状は昨年秋、新型コロナ感染拡大により修学旅行が中止になり、益子舘での宿泊が叶わなかった群馬県内の、とある公立小学校6年生からのものと判明した。教師を含め75通あった。絵莉さんは、母親で女将の美江さんら家族と共に感動すると同時に幸せの瞬間を味わった。
 思い起こせば、年賀状をくれた児童たちは、コロナ禍での修学旅行の行程変更で9月16日に益子を訪れ、益子舘に宿泊するはずだった。ホテルでは、9~12月初旬までに群馬県内の17の小学校の修学旅行を受け入れる予定で、村田弘支配人は、コロナ対応のために担当教師と綿密な打ち合わせをし、スタッフと準備を進めてきた。それが全て中止となったのだった。
 女将と若女将は、日々コツコツと取り組んでいる村田支配人に年賀状を見せた。村田支配人は涙を浮かべながら読んでいた。同ホテルでは、女将からの感謝の手紙を添え、「陶芸の街ましこ」を知ってもらおうと全員に益子焼の湯呑み茶碗をお礼に送った。担当教諭から『お手紙に感動しました』の連絡があり感動が連鎖した。
 女将や若女将、専務、支配人は、先生が子どもたちにホテルの準備の様子を伝えてくれたのかもしれない、パソコンの授業か道徳の時間で年賀状を作成したのかな、宛名の書き方も教わったのかな…と教師と児童の教室でのやりとりの光景を思い描いた。
 児童らは、修学旅行中止の無念さを乗り越え、未踏の益子、ホテルの従業員らに見えない部分への感謝の気持ちを年賀状という形にしてくれた。「この年賀状は宝。改めて心の教育の大切さを実感した。新しいことに挑む勇気が湧いた」という若女将と専務は、「益子町を1人でも多くの人に知ってもらおうと決めた。小さなこともコツコツと」と、新年に力強い目標を掲げた。

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